形成外科を受診される方へ

形成外科のイメージ写真

形成外科では、体の表面組織に生じた異常や変形、欠損に対して、いろいろな手法や技術を用い、機能はもとより形態的にもより正常に、より美しく「形成」する外科です。
患者さんお一人お一人の悩みに真摯に向き合い、その方に合ったオーダーメイドの治療を心がけます。

形成外科で拝見する
主な症状や疾患

眼瞼下垂

眼瞼下垂とは、目を開ける筋肉(眼瞼挙筋といいます)の機能が弱く、それに伴って上まぶたが垂れ下がっているために、目が開けづらくなる状態です。また上まぶたの皮膚のたるみが目の開けづらさの原因となっている場合もあります。
中には生まれつきまぶたを開く力が弱い方がおり、この場合を先天性眼瞼下垂と言います。
生まれた時は正常でも、加齢によるまぶたの皮膚のたるみのほか、様々な原因で眼瞼下垂になることがあり、この場合を後天性(加齢性)眼瞼下垂と言います。
ものが見にくく、まぶたが下がっているために肩こりや頭痛が強い方では、保険を使った手術治療が受けられます(年齢、症状によっては保険診療の適応とならない場合もあります)。

手術では、まぶたを挙上する処置を行います(症状や下垂の程度により手術法は変わってきます)。また、上まぶたの皮膚のたるみが強い場合には、まぶたの皮膚を切って縫い縮める処置を行います。
眼瞼下垂の手術を受けると目が開きやすくなり、物が見やすくなって、疲れにくくなります。
眼瞼下垂ですと、まぶたが下がっているため、どうしてもおでこに力を入れ、眉を上げて物を見るようになります。そのため眼瞼下垂がある方は肩こりになりやすいのですが、この手術で肩こりが治る患者さんも多くいらっしゃいます。
また、形成外科では形態にも留意し手術を行っています。

脳への情報の90%は目からの情報といわれています。
眼科で白内障の手術を受け、目が見えるはずですが、まぶたが垂れ下がっているために適切な視覚情報が得られないと、脳への刺激が減少し、認知症が進行することもあります。それほどに目からの情報は大切です。
今後ますます高齢化社会となりますが、元気で生きられる健康寿命を延ばすための重要な手術と考えております。
長期的なコンタクトレンズの使用、目を良くこすってしまう、肩こり・頭痛がある、目が開けにくくおでこに皺があるなど、思い当たる症状がある方は、ぜひ当院へご相談ください。

逆さまつ毛

逆さまつ毛には、睫毛乱生(しょうもうらんせい)と眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)の二種類があります。

睫毛乱生
睫毛の並び方が不揃いで、睫毛の一部が角膜(黒目)に触れて刺激し、痛みや痒み、異物感などを生じさせます。
若い人に多いです。
眼瞼内反症
まぶたの縁が目の内側に曲がり、睫毛が角膜に触れて黒目を刺激し、痛みや視力低下を生じさせます。
生まれつきある方と、ご高齢になってから起こる方がいます。

睫毛乱生の治療では睫毛抜去が行なわれているケースも多いですが、やりすぎるとさらなる悪化を招くともいわれており、症状が強い場合は手術によってまつ毛を外に向けます。
眼瞼内反症の治療についても、症状が重い場合には手術が必要です。皮膚のたるみや眼輪筋の筋力低下など、加齢によるもの(老人性)には手術が必要となることが多いです。
生まれつきある方や若い方も角膜が傷ついたり、痛みなどの症状がある方は手術が必要となります。
手術法には、まぶたの中に糸を縫い込む「埋没法」、皮膚と皮下組織を切開して瞼板(まぶたの先端にある板状の組織)に縫い付ける「切開法」、加齢による眼瞼内反には「眼輪筋短縮法」などがあり、患者さんの症状によって治療法はそれぞれ変わってきます。

ほくろ

ほくろは、正式には色素性母斑と言い、皮膚の一部にメラノサイトという色素細胞が集まったものです。
ほくろは皮膚悪性腫瘍、特に悪性黒色腫との鑑別が大切です。悪性黒色腫はリンパ節に転移しやすく、進行が速く命に関わることがあります。
短期間で急に大きくなったり、色が濃くなったり、色素がまわりの皮膚に染み出してきたり、硬化してきたような場合は、注意が必要です。
当院では、ダーモスコピーと呼ばれる医療用の拡大鏡を用いて、診断や鑑別を行っています。

ほくろの切除法は、ほくろの生じている場所や形状、大きさなどを考え合わせた上で、メスによる手術か炭酸ガスレーザーを選択します。

粉瘤

粉瘤(ふんりゅう)はアテロームとも言い、皮膚の皮が毛穴の奥で袋を作ってしまい、中に老廃物や皮脂が溜まった半球状の良性腫瘍で、中央部には黒点状の開口部があります。強く圧迫すると、開口部から臭くてドロドロした内容物が排泄されるケースがあります。

顔や耳のまわり、耳たぶ、鼠径部(そけいぶ)、背中などによくできますが、毛穴がある場所なら、どこに生じてもおかしくありません。ですので、頭のてっぺんから足の裏にも出現することがあります。
いつの間にかできて、自然に小さくなることもありますが、少しずつ大きくなって目立ってくるケースもあります。
また、ある時突然赤くなって腫れや痛みが出て、粉瘤のまわりに急に化膿や炎症を起こすケースもあります。炎症を起こして、はじめて粉瘤に気づいたりもします。
粉瘤が化膿を伴っている場合は、まず化膿の治療を行います。
抗生剤の内服を行い、膿が溜まっている時は、局所麻酔をして切開の上、膿を出します。
内服薬で症状が治まってくれば、そのまま小さくなるまで様子を見ます。
切開排膿後は、中から膿が出なくなるまで、創部の洗浄を続けます。

化膿していない時、または化膿が治まったら、局所麻酔下で粉瘤を袋ごと取り出す手術を行います。
手術後は、翌日に傷の具合を確認し、手術した部位に合わせて1~2週間後に抜糸します。
手術では、粉瘤のヘソと呼ばれる部位を含むように、皮膚の一部と合わせて袋ごとできものを取り出します。

脂肪腫

脂肪腫とはその名の通り、脂肪の一部が腫瘍のように増殖したものを言います。
皮膚の下に軟らかい固まりとして触れることができます。大きさは、いろいろです。
この脂肪腫は5cm前後のことが多いのですが、中には10~20cmのものも見られます。ここまで大きい脂肪腫の場合は、その一部が悪性化している可能性があり、要注意です。MRIなどの画像診断で、脂肪腫の状態を調べておくことが必要になります。
多くは良性ですが、急に大きくなってきた、痛みがあるなどの場合は注意が必要です。早めに皮膚科や形成外科を受診しましょう。
治療は腫瘍を取り除く手術が必要です。小さい場合は局所麻酔下での手術が可能で、当院でも日帰りで手術可能です。

日常的なケガ

日常生活を送る上で、誰しもがなる可能性のある最も多い疾患であると思います。
ケガをすると、特に指先や頭は血流が豊富な部位ですので、たくさんの血が出てびっくりすると思いますが、まずは患部を圧迫して止血をしましょう。
清潔なガーゼや布でおさえると良いです。よくティッシュペーパーで抑えがちですが、傷口に張り付きやすいので、どうしてもの場合に使用しましょう。
カッターなどで皮膚の一部を削いでしまったら、その削いだ皮膚を濡れたガーゼに包んでご持参ください。くれぐれも捨てないようにしましょう。

また、夜間など救急外来で縫合や処置を受けたら、翌日に当院などの形成外科を受診してください。縫合も重要ですが、縫合後の処置も同じように大切です。
特に、顔にケガを負った場合は、きずあとが心配になると思いますので、形成外科の受診をお勧めします。外傷後のきずあと、あるいは手術を受けた手術痕が目立つなどの悩みに対応できるのが形成外科です。
傷跡をゼロにはできませんが、できる限り目立ちにくくする手術も可能です。お気軽にご相談にいらしてください。

当院では可能な限り緊急のキズ縫合にも対応しております(混雑状況次第ではすぐに縫合処置を行えない場合もあります)。

巻き爪・陥入爪

巻き爪とは、爪が内側に巻いていってしまう状態のことです。
足の指先にしっかりと体重をかけていないことが原因のひとつです。
足の親指が巻き爪になりやすく、ヒールを履いている女性や、靴が合っていない方、足の形によって指先を踏みしめて歩いていない方が発症する場合が多いです。場合によっては足の他の指の爪や、手の爪も巻き爪になることがあります。

陥入爪とは深爪やもともとの爪の形が原因で、爪の端が足の指に食い込んでいる状態のことです。
女性のパンプスなど窮屈で足趾に負担のかかる靴を履いている方や、普段から革靴など硬い靴を履いている方、シューズのきつい靴で運動されている方が発症する場合が多いです。深爪をしてしまった後に発症することもあります。
陥入爪が進行すると、指の肉に爪がどんどん食い込み、激しい痛みを起こし、さらに巻き込まれた皮膚が化膿し、歩くことさえ困難になります。

また、巻き爪・陥入爪といった爪のトラブルのために足をかばって歩くと、不自然な歩き方になり、足首や膝、腰へと負担がかかり、捻挫や膝痛、腰痛を起こす原因にもなります。
巻き爪1つで全身のバランスが崩れて、さまざまな体調不良を引き起こす可能性があるのです。
当院では、まず正しい爪の切り方を説明させていただき、症状に応じてテーピング、クリッピングなどの保存療法、陥入爪手術と呼ばれる手術療法を提案させていただきます。
手術を行う場合でも、局所麻酔日帰りで可能です。
歩くたびに痛みがあることは非常に苦痛ですので、気になる場合は早めにご相談ください。

わきが(腋臭症)・多汗症

わきの汗の悩みは、人からにおいを指摘された、洋服が黄ばむという嫌なニオイ悩みと、わきからの多量の汗で、ブラウスを着ると目立って困ってしまう、などの悩みがほとんどでしょう。
わきが(腋臭症)は、汗による臭いが症状で、多汗症は汗が多いということが問題となります。
わきがの治療は、様々な方法が考案されていますが、アポクリン腺を術者が一つ一つ確認して切り取っていく剪除法(せんじょほう)が最も一般的で確実です。当院でも日帰り手術で対応可能です。
また、多汗症や軽症のわきがの方には当院では最近発売となった保険診療で行える塗り薬の治療や、ボツリヌストキシン注射(自費診療)を使用しての多汗症治療も行っております。
患者さんお一人お一人に合わせた治療法をご提案します。ぜひご相談ください。

やけど

まず、やけどはその症状によって1度から3度に分けられます。初期の対応がとても大事です。
早めに炎症を抑えてあげることで重症度はかなり変わります。
1度であれば、患部のクーリングや外用で改善することも多いですが、2度になると治療に時間がかかり、痕が残ることもあります。

やけどをしたら軽症だと思ってもご自身で判断することなく、患部を冷やしながらすぐに当院へお越しください。目安は流水で15~30分冷却するのが望ましいです。
症状によって外用薬を使い分け、場合によっては抗菌剤内服薬を使用して適切に治療いたします。

なお、3度になると皮下組織の脂肪組織や筋膜にまで及ぶ深いやけどです。
痕が残るだけでなく機能障害も残り、長期間に渡る治療が必要となり、皮膚移植などの外科治療が必要になってきます。
その場合は適切な治療が可能な大きな医療機関へすぐにご紹介いたします。